「愛しのフリーダ」(米・英/2013年)

◇17歳の若さでビートルズの秘書になったフリーダ・ケリーのドキュメンタリー。原題"Good Ol' Freda"の"good oldという表現は、私にとってシャーロック・ホームズでなじみ深い。第一次世界大戦の足音迫る「最後の挨拶」で、ホームズは相棒のワトソンにこんな言葉を投げかけるのだ。「Good old Watson! 時代が移り変わっても、君は少しも変わらない」シリーズ最終話、最後の台詞である。

 

◇ホームズが愛惜を寄せたワトソンの佇まいは、この映画から受けるフリーダの印象と重なる。狂乱の中でも自分を強く持ち、なすべきことをなしてきた人がまとう安心感なのだろうか。ビートルズや、その側近・家族が彼女に寄せた信頼の理由が、何となくわかる気がするのだ。数多いビートルズ関連作品の中で、本作は決して初心者に親切な部類ではない。ビートルズのドキュメンタリーではないから網羅性に欠け、前提知識がないとなかなかぴんとこない(面白さのわからない)話も多い。だがビートルズのドキュメンタリーではないからこそ、ビートルズファン以外の方が見ても楽しめるのではないだろうか。歴史の変わり目に立ち会った女性、不自由な立場にいながらも最高の仕事で信頼を得た職業人の記録を、色んな方に見てほしいと思う。

 

愛しのフリーダ/米・英/2013年

監督:ライアン・ホワイト

 

◇以下は私的メモ。

 

・「ジョージは静かなビートルと呼ばれていたが、実際はおしゃべり。話し方は物静かだった。一番思慮深かった」byフリーダ

・ファンへのサインはジョージが一番積極的だった。

・マネージャーのブライアンは怒りっぽく、社員から避けられていた。フリーダもブライアンから大目玉を食らっているところを、ジョンに助けられたことがあった。

・フリーダはビートルズファミリーとも親交が深かった。特に親しかったのはリンゴの母親。彼女がブライアンに直訴してくれて給料が上がったことも。市のレセプションにもスターキー家の一員として参加した。ポールの父親からは酒を習い、ジョージの父親からは社交ダンスを習った。

・フリーダから見たハリソン家はジョージに対して過保護だった。一番名声を楽しんでいて、ファンレターの返信にも積極的だった。

・増え続けるファンレターの返信に難儀し、ブライアンがメンバーのサインをゴム印にしたことも。不誠実だと感じたジョンが反発し、結局ゴム印は使われなくなった。

・メンバーの結婚に関する質問がファンクラブに寄せられた時には、会報で「メンバーの私生活はメンバーの問題」と返したフリーダ。「彼らにも私生活を侵されない権利があったはず」と振り返っていて、辛くなる。

ビートルズ解散後もフリーダはファンクラブ運営を続けていたが、二人目の子の妊娠を機に身を引くことに。話し合いの席にはジョージとリンゴが同席。フリーダの意向を知ったジョージは、「君はビートルズの最初と最後を見た。これでファンクラブは解散だ」と告げた。