映画

「十二人の怒れる男」(米/1954年)

◇押しも押されぬ名作、しかも社会派・会話劇・法廷ものと好きな要素が多いこともあって、意気込んで鑑賞した。なるほど、傑作の誉れが高いのもうなずける堅牢な作品だ。手狭な一室で繰り広げられる会話のみで、観客に手に汗握らせ続ける手腕は、名人芸という…

「フィリップ、きみを愛してる!」(米・仏/2009年)

◇様々な感情が湧き上がってくる映画だったが、最後に残るのは空っぽになった感覚だ。疾走するような物語の展開と、抜けるような青空と、風を全身に浴びるような音楽が混然一体となって、あらゆる感情をどこかへ押しやってしまう。奇妙な軽やかさは心地よく、…

「将軍たちの夜」(米/1967年)

◇主演ピーター・オトゥールとオマー・シャリフ、音楽モーリス・ジャール、制作サム・スピーゲルの戦場映画―――「アラビアのロレンス」再び、とでも言いたげな布陣である。だからこそ期待しすぎないように気を付けてはいたのだが、予想外の方向でもどかしい思…

「愛しのフリーダ」(米・英/2013年)

◇17歳の若さでビートルズの秘書になったフリーダ・ケリーのドキュメンタリー。原題"Good Ol' Freda"の"good oldという表現は、私にとってシャーロック・ホームズでなじみ深い。第一次世界大戦の足音迫る「最後の挨拶」で、ホームズは相棒のワトソンにこんな…

「英国万歳!」に見るポルフィリン症

英国王ジョージ三世の錯乱をテーマにした映画「英国万歳!」を1か月ほど前にレビューした。 crackerboxpalace.hatenablog.com 映画はジョージ三世がポルフィリン症を患っていたとする説に言及しており、実際にポルフィリン症の病態に即した描写をしているよ…

ブエノスアイレス(香港/1997)

◇ブエノスアイレスが舞台の香港映画でTurtlesの"Happy Together"を聞くことになるとは!使われているのは粘着質な原曲ではなく、幾分アッパーなカバーバージョンだ。許諾の関係でやむを得ずカバーになったのかもしれないが、原曲が流れていたら映画から受け…

英国万歳!(英/1994)

◇本作はコメディと紹介されているようだが、お腹を抱えて爆笑するような愉快さは期待しない方がいい。この作品にあるのは権威をこけにする意地悪な笑いと、悲喜こもごもの人間模様から醸し出されるおかしみだ。イギリスコメディの愛好者には堪らない堂々たる…

ザ・プリズナー(英/1955)

◇どうやら本作、日本では劇場未公開らしい。確認した範囲では、現在もAmazonがVOD配信しているのみだ。恐らくほとんど人目に触れていないのだろうが、あまりにも勿体ない。日本語の作品情報もほぼ見つからなかったので、布教を兼ねて、今回は簡単な紹介から…

バッファロー'66(米/1998)

◇冒頭でこんなに引き込まれた映画はここ最近でちょっと思い出せない。いきなり登場する子供と愛犬の写真に意表を突かれているうちに、全面灰色の背景に白字を抜いただけの簡素なクレジットロールが始まる。紙芝居のようなクレジットが終わると、大写しの刑務…

東京物語(日本/1953)

◇小津作品を見たのはこれが初めて。低い位置に固定されたカメラや話し手を真正面から捉える演出になかなか慣れず、最初はカメラワークにばかり意識が向いてしまったが、段々と物語に引き込まれていった。 ◇子供たちと久方ぶりに再会するため、遠路はるばる東…

「マイ・ブラザー」(米/2009)

◇帰還兵の問題を扱った作品という予断を持って見たので、そのウエイトの低さにやや出鼻を挫かれた。実際は問題を抱えた家族の物語の中で帰還兵とその周囲の苦悩が扱われているといったところだろう。考えてみれば原題も邦題も「兄弟」なのだから、看板通りの…