「マイ・ブラザー」(米/2009)

◇帰還兵の問題を扱った作品という予断を持って見たので、そのウエイトの低さにやや出鼻を挫かれた。実際は問題を抱えた家族の物語の中で帰還兵とその周囲の苦悩が扱われているといったところだろう。考えてみれば原題も邦題も「兄弟」なのだから、看板通りの作品である。それにしても帰還後のパートはもう少し尺を取ってもよかったと思うけれども。まあ、くだくだしくないのは美点だと思う。

 

◇父の後を追うように海兵隊になった優等生の兄と、兄の出征直前に出所したばかりの問題児な弟。比較されて育った二人だが、互いを疎ましがる様子はない。二人を結びつけるのは、母を早くに亡くし、横暴で心を通わせられない父親を持った寂しさだ。この作品のキーワードの一つは「寂しさ」かもしれない。兄の娘は妹に比べて愛されていないと感じて悩み、やはり兄と比較されて育った弟と心を通わせる。彼女の寂しさはある決定的なできごとの引き金になる。ネタバレになるが、兄が戦死したと知らされた妻が徐々に弟に惹かれていくのも、寂しさが原因だろう。これは何も夫を亡くした寂しさばかりではない。優等生の兄とお似合いのカップルと思われていた妻は、弟に「私は堅物なんかじゃないのよ」と吐露し、たばこを吸ってみせる。存命なら同じコミュニティに住んでいる可能性が極めて高そうな彼女の両親は、娘の夫が戦死したというのに、コンタクトを取ってきた形跡がない。作中で明確に描写されているわけではないが、彼女も恐らくは寂しさを抱えて育った人なのだ。奇跡的に帰還を果たした兄が、執拗に妻と弟の仲を勘ぐったのも、二人の中に同種の寂しさがあることを感じ取っていたからかもしれない。そんな兄は戦場での壮絶な体験によって、家族に囲まれた穏やかな日常との精神的接点を失ってしまい、孤独の中に隔絶されることになる。彼は上官に「誰も私を理解できない」と語る。その時だけは無表情だった彼の顔に生の感情が兆す。どうしようもない孤独感ゆえに、彼は再び戦場に赴こうとすらする。偽りの平穏が破綻したあと、妻の必死の懇願によって、「理解されない」という諦めを「理解されたい」という渇望が凌駕するラストシーンでようやく、かすかな希望が見えてくる。

 

◇ところで私は虫唾が走るほど「ディア・ハンター」が嫌いなのだが、あの映画を見てからというもの、敵兵の描写が必要以上に気になって仕方がない体質になってしまった。この作品は比較的コンパクトにまとめているので、主題ではない敵兵側の事情まで掘り下げる作りにはなっていなかったが、それでもバランスを取ろうとする意思は感じられる。部族内の内通者を処刑するシーンで身内の少年が顔を歪めている描写とかね。ストーリー上の必然性はそれほどない一幕で、やや浮いていた気もするけれども、ないよりは良かったと思う。

 

マイ・ブラザー /米 / 2009

監督:スサンネ・ビア

キャスト:トビー・マグワイアー、ジェイク・ジレンホール、ナタリー・ポートマン